空のペットボトル

読んだ本やアニメの感想。

FGO「異端なるセイレム」アビラヴィの話。

どうも、初投稿から1ヵ月近く空いてしまいましたね。文章の練習にとブログを始めたからにはもう少し頑張りたいところです。

 

今回はセイレムの話をしたいなと思います。みなさんはFGOをやっていますか?そして先週11/29に開幕された亜種特異点Ⅳ「禁忌降臨庭園セイレム 異端なるセイレム」をクリアしましたか?

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クリアしてない方は是非クリアしてから、ネタバレ気にしないよという方はご自由に、そもそもやってないよという方はこの記事で興味を持ってアプリをインストールしてくれたら嬉しいです。

 

「セイレム」は、17世紀末に実際に起こったセイラム魔女裁判をモチーフとしたもので、人々の猜疑心、贖罪の意識がテーマとなった、FGOにしては戦闘の少ないクトゥルフTRPGのようなシナリオでした。

 

とても面白い話で魅力あるキャラクターもたくさんいたのですが、最大ボリュームという謳い文句もあり、全部語るとなると大変ですので、今回は二人のキャラクターに焦点を絞って語っていきたいと思います。

 

まずは一人、「アビゲイル・ウィリアムズ」f:id:ochamon330:20171208160527p:plain

今回のストーリーの看板ともいえるキャラクターです。先日ガチャで追加されて、多くのプレイヤーの財布を溶かしましたね。僕は持っている100連分の石を使ってなんとか引くことができました。

このキャラクターの設定を軽く挙げましょう。

  • 裕福な家庭に生まれる
  • 両親は事故で死亡していて、叔父の世話になっている
  • 明るい性格で友人も多く、村人から家族への信頼も厚い
  • 信心深い
  • 故郷(セイレム)への不満はあるが、ここを出たこともない
  • 外国の話が好き

 

そしてもう一人、「ラヴィニア・ウェイトリ―」f:id:ochamon330:20171208160913p:plain

こちらはプレイアブルキャラではないのですが、物語の重要人物で、人気のあるキャラクターです。Twitterなどのイラストで見かける人も多いのではないでしょうか。

こちらの設定は

  • 魔術師の家系
  • 両親は既におらず、祖父と共に暮らす
  • 暗い性格、ウェイトリー家そのものが村人から疎まれている
  • 礼拝に一度もこない(信心が薄い?)
  • セイレムは本来自分のいるべき場所ではない
  • 本が好き

 

このように二人の境遇は正反対であり、髪色から性格までまるで違います。

しかし、箒星の輝く年に生まれた二人は、一緒に海で鯨を見たり、外国の話を聞かせたり、星の知識を教えたりと、仲の良い親友でした。

箒星の輝く下で生まれた二人、「プリティーリズム・オーロラドリーム」を履修している皆さんなら、スケート座の女神に祝福されし乙女達を想起するため、この時点で既にエモくなるのではないでしょうか。

 

物語序盤のアビゲイルがラヴィニアを主人公たちの演じる劇へ誘ったり、二人でこっそり公演から抜け出す様は十二歳の少女らしいかわいらしさがあります。

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いわゆる幼女百合というやつです、ほほえましいですね。

 

そんなまんがタイムきららで連載してそうな可愛い雰囲気から一転、ラヴィニアの祖父が魔女裁判で死刑になったことから二人の関係のじっとりとした部分が浮かび上がっていきます。

アビゲイルの叔父、カーターからの告発により、祖父を失ったラヴィニアに謝罪するアビゲイル。そのやりとりがこちら。

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「許さない、でも謝罪を受け入れる」

これは「セイレム」のテーマである「赦し」にも繋がるものですね。オタクは「赦し」が大好き。許すことはできなくても彼女の想いはしっかりと受け止める、12歳の少女とは思えない気持ちの割り切り方。設定では記述しておりませんでしたが、アビゲイルはわがままな部分があり、ラヴィニアは自身を抑制するような描写があり、ここでも二人の対称性が見受けられます。

 

ラヴィニアはセイレムを去ることを告げ、そしてアビゲイルも一緒に村を出ないかと誘いをかけます。しかし、村の外に焦がれているのにもかかわらず、アビゲイルはそれを拒絶、セイレムに縛り付けられている彼女は村を抜け出すことを選べません。

それをラヴィニアは「あなたならそういうと思った」と受け入れ。彼女の下を去ります。

そして、アビゲイルはラヴィニアのことを想い、二人の秘密の場所でラヴィニアから教わったまじないを行います、「セイレムが安らかに休める場所に、ラヴィニアが笑って過ごせる場所になるように…」と。

そのまじないが魔女狩り裁判を取り仕切るホプキンス判事に見つかってしまいます。それはあろうことか、彼女の親友であるはずのラヴィニアの告発によるものでした。

しかし、その告発すら、祖父を死刑にしたホプキンスへの復讐をし、ウェイトリー家の信仰する外なる神への生贄とするためのラヴィニアの罠でした。

我を失ったかのようにホプキンスをめった刺しにするラヴィニアの迫力は、正に狂気に彩られた「セイレム」のストーリーを体現しています。

そしてそんな彼女に近づこうとするアビゲイルに対してラヴィニアは突き放すように言います。

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「セイレム」で一番好きなセリフです。

アビゲイルがラヴィニアのアルビノの肌を、髪を、「星の妖精のようでとても綺麗」と評したようにラヴィニアもまた、アビゲイルの金髪を美しいものと思い、それが血に汚れることを忌避します。自身も忌み嫌う容姿や魔術に関して、また殺人を犯したことから無垢なアビゲイルを遠ざける意味も含めた行動を、「あなたの髪に血がつくわ」という言葉で表現するのがとても美しいです。

 

一連の、村から抜け出すことを告げ、アビゲイルやホプキンスを誘い出す、というラヴィニアの狡猾さと、「あなたならそう言うと思った」「あなたの髪に血がつくわ」のセリフからみれるアビゲイルへの想い。

こうした美しさばかりではない関係性は、アビゲイルからラヴィニアへの感情からも見ることができます。

 

物語終盤、「外なる神」を降臨させる「魔女」としての力を覚醒してしまったアビゲイルは、最後の魔女裁判によって今までセイレムという地で起こしてきた罪を語ります。

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その内容はラヴィニアを呼び寄せたのは、アビゲイルの「親友が欲しい、神の愛が届かない可哀想な子でも、私なら愛せるから」という願いでした。

 

ラヴィニア・ウェイトリ―とは書物の登場人物で、セイレムで箒星の下に生まれたとか、アビゲイルと共に鯨を見た、というのは全て偽りの記憶だったのです。

ラヴィニア自身最初はアビゲイルに友達のフリをして近づいた、だけどその内に偽りの記憶が流れてきた。

なんだアビゲイル悪い奴じゃん許せねえ!と思ってしまい、ロビンのセリフに同調しますが、

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ラヴィニアはいちばんつらいのはアビゲイルだと示唆します。

たしかにラヴィニアを望んだのはアビゲイルの深層意識ですが、記憶の混濁などはアビゲイルが望んだことではありませんし彼女自身もその影響を受けております。

 

魔女裁判に決着をつけるため出廷したラヴィニア。

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このやりとりは村を抜け出そうと呼び掛けるラヴィニアと、それを断るアビゲイルのシーンを彷彿とされます。しかし、アビゲイルは村に縛られるがため断ったのに対し、ラヴィニアは自分の意志によって出廷を決めています。この構図が熱い。強い意志をもった「ニセモノ」、ゲーム内の相性でアビゲイルのクラスであるフォーリナーアルターエゴに対して弱いのもこういった所からきているのかと思えます。

 

しかし、自身がホプキンスを罠に嵌めたように、ラヴィニアを呼び寄せたのも、アビゲイルによる外なる神の降臨を完成させようとする魔神柱の罠でした。魔神柱によってラヴィニアは重傷を負い、アビゲイルはついに覚醒します。

 

ここのアビゲイルとの戦闘や主人公たちとのやりとりは割愛します。プレイして自分の目で確かめてくださいね!

 

応急処置で一命をとりとめたものの、もう長くはないラヴィニアは、アビゲイルに語ります。

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記憶の混濁があったのかもしれない。でもラヴィニアにとってアビゲイルは作り物だった自分を望んでくれた、アビゲイルにとっては退屈な内側の世界だったとしても、本の世界から外の世界へと連れ出してくれた。

記憶や存在が偽りのものであったとしても、その想いは確かに本物であった。

だからラヴィニアは自ら二人を「おんなじ箒星の子」と呼ぶのです。

 

ラヴィニアは死に、魔女裁判騒動は終わり、セイレムという特異点にも終わりが近づきます。

アビゲイルは自身を赦し、セイレムを旅立つことを選びます。

その中で、いつか主人公たちとサーヴァントとして巡り合えること、そしてラヴィニアと出会えることもある、そういいます。

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本当にアビゲイルとラヴィニアが出会えるのかはわかりません。ですが親友が欲しいと願うことで、二人は巡り合えた。

 

だから彼女はいつか巡る箒星を待ち、一緒に鯨を見ることを願うのです。

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