空のペットボトル

読んだ本やアニメの感想。

今週観た/読んだものの話。-2

久しぶりに本屋に行って色々物色したのですが、やはり楽しいものですね。

今期アニメは「SK∞」が面白そうで、「ウマ娘」の2期2話がすごい熱くて涙腺にきました。

 

今週の観た/読んだもの

〇ドラマ

・カルテット

〇映画

タクシードライバー

〇漫画

・夢の端々

・ぼくとねこ

・最果てのソルテ

・狭い世界のアイデンティティ

・呪いと性春

・裏路地浪漫屋物語

・繭、纏う

・戦争は女の顔をしていない

〇小説

・白日

 

カルテット

www.tbs.co.jp

主役4人について、キャラが立っているようでみみっちさや立ち位置のハッキリしなさが作中で描かれる才能のなさとマッチしていて味を感じる。

また、起きる問題や人間関係のぐらつきに対しても答えを出さず曖昧にしたままグダグダと進んでいくのだが、それが「人生をやり直すスイッチを押さない」という作中唯一明言した選択をより際立たせるものになる。

この不可逆性については作中でから揚げにかけたレモンやドミノなどで象徴的に何度も描かれている。主題がわかりやすくあらゆる方法で表現される作品が好き。

それはそれとして来杉有朱という目が笑っていない元地下アイドルの女が好き。

金を掴まされたら知人だろが傷口に塩を塗り込むし車パクッて人の楽器売ろうとするし海に沈められそうになったり株で大損こいたり店長をハニートラップにかけようとしたら失敗してバイトクビになったりするところ全てが愛おしい。

主役4人が自分たちの悪評を利用した一世一代の大勝負をかける傍らで外国人セレブ捕まえて「人生、チョロかった!」と高笑いするシーンは何度でも観たい。

 

タクシードライバー
タクシードライバー (字幕版)

タクシードライバー (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 教室にテロリストが襲撃されたらみたいな妄想を実現しようと色々暗殺グッズを交錯するパートが好き。アメリカでは銃が比較的簡単に手に入るもんな。

主人公のトラヴィスが調子に乗ってこれから襲撃する議員のSPに話しかけて怪しまれて計画がとん挫するのが笑えるし、そのままヤケになって売春グループの男たちを襲撃した結果市民のヒーローのように持て囃されるのが良くも悪くも彼の人生のままならなさを感じさせる。

また、この流れついて相当性格が悪く描かれている。

ヒロインは2人いる。1人は選挙事務所で働くベッツィ、もう1人は売春を行う家出少女アイリス。

ベッツィは仕事上議員を応援してはいるが、政治について適当な返しをするトラヴィスを好ましく感じていたり、選挙で優勢な議員の演説で浮かない顔をしていたりと、議員に対して快く思っていないような描写がみられる。

アイリスは売春グループの一人の男を愛していた。

つまり、トラヴィスによる議員の襲撃の失敗からの売春グループの襲撃は世間にとってはどちらも喜ばしいものであったが、ヒロイン二人にとって良いものであった訳ではなかった。

ここも含めてトラヴィスの人生が滑稽に描かれている。

特に、アイリスに関してはトラヴィスの襲撃後、彼女の家族から感謝の手紙が届くが、一切本人が映されることはなかったのが悪いなあと感じた。

 

夢の端々
夢の端々(上) (FEEL COMICS)

夢の端々(上) (FEEL COMICS)

 

最高の百合漫画。

認知症の主人公が記憶をたどっていく形で進行する物語。

主人公が忘れていく記憶の中で最後まで残ったものが一番鮮烈で大切な記憶であるということを、時系列を遡って描くことで読者にも追体験させる構成が上手い。

読み返すとありとあらゆるセリフがつながっていることが発見できる。

貴代子が離婚する際、「家事は誰にでもできることではない」とミツが力説したことは、貴代子が結婚する際、仕事ができないことの劣等感が原因と語っていたから。さむいさむいと言いながら2人でアイスを食べていたかったのは、冬の山で心中しようとした日があったから。

また、読み返すと1話の「1秒でもなにかが違ってたらきっと私たち出会ってもいなかった」というセリフの破壊力が倍増する。心中しようとして、失敗して、帰ろうとしたら事故で心中未遂がバレて、仕事が上手くいかず結婚して、妊娠して、運試しに失敗して、と何もかも間違えた結果、今の二人があることが分かってしまったので。

ミツが真澄に手袋の中身を見るか聞くシーンが好き。貴代子との唯一無二の絆を他人と共有できる過去のものにしてしまうかどうかの瀬戸際だったんだなあ。

本屋に上巻がなかったから電書で買ってしまったが紙で色々振り返りながら読みたい。

 

ぼくとねこ

rookie.shonenjump.com

現在のコロナ禍をモチーフにしたポストアポカリプス世界の話。

シンプルな絵柄とコマ割りだからこそ描かれる生活や感情に親しみを覚えるし24話でめちゃめちゃ泣くハメになるし最終話の景色が鮮烈になる。

別作画で単行本化されたり映画化されることで過剰な飾りつけがされてほしくないけどこの作品を多くの人に知ってほしい。

 

最果てのソルテ
最果てのソルテ 1巻 (ブレイドコミックス)

最果てのソルテ 1巻 (ブレイドコミックス)

 

一番好きな漫画家・水上悟志先生の新作。

最初のページから戦国妖狐2部の手法を使っていて最高のクライマックスを約束してきた。タイムリープだったり、ファンタジー世界なのに変容する景色の中にビル群があったりと、お得意のSF描写もありTHE・水上悟志を感じられる。

連載も隔月以下のペースなので、ゆったり楽しみたい。

 

狭い世界のアイデンティティ

そんな……水上悟志先生が繰り出すカッコいい必殺技がただの掌底の前に敗れ去るなんて……

ハイスコアガールも好きだけど押切作品はゆうやみ特攻隊みたいなアクション漫画がもっと好き。ぐらんばあ2、気になる。

 

呪いと性春 文野紋短編集

タイトルの通り、呪いと性と青春を題材にした退廃的な雰囲気の短編集。

こうした作品では珍しく(感じる)、あとがきで作品の意図について結構書かれている。

作品について色々文字で語るのはダサいみたいな風潮があるけど私は読めるものなら読みたいので嬉しい。

そんな中かなりショッキングな作品の「毒は廻る」についてのあとがきが一言だけだったことについては……

このような多数からみて「良」とされない者について描いた物語があることで誰かが楽になったり見つけられた感覚になるといいな、という祈りがある。

「救われる」というと大げさで強い感じがするけれど物語によって「見つけられる」という感覚を大事にしていきたい。

 

裏路地浪漫屋物語
裏路地浪漫屋物語 (girls×garden comics)

裏路地浪漫屋物語 (girls×garden comics)

 

絵柄がかわいくて表紙買いした百合短編集。

絵柄通り綺麗でかわいい話が詰め込まれていてうれしい。

「15分の匣庭」の関係性や言葉遣いが本当に綺麗でよかった。

 

繭、纏う
繭、纏う 3 (ビームコミックス)

繭、纏う 3 (ビームコミックス)

 

中等部から髪を伸ばし続け、高校を卒業する際に髪を切り、その髪で制服が作られる、という学園が舞台の百合。

洋子の言う「王子なんかやめちゃえ」がどれだけ華にとって鋭い言葉だったかが巻を重ねるごとに判明していく。

 

戦争は女の顔をしていない

軍役のロシア人女性の体験談を描いたオムニバス。

過度に悲劇的だったり武勇伝のように描いたりすることなく当時の生活のあり様を描くのは「この世界の片隅に」っぽさを感じる。

監修の速水螺旋人による巻末の過密コラムで「靴ずれ戦線」を思い出す。

 

白日
白日 (角川書店単行本)

白日 (角川書店単行本)

 

「機龍警察」シリーズが好きで買った月村了衛先生の現代ミステリ。

弱音を吐く社員のヤジだったり嫌なタイミングで常にあらわれる不気味な同僚だったり随所で月村先生っぽさを感じる。というか飴屋は「機龍警察」の小野寺の親戚かなんかでしょ。

欺瞞だらけの社会の中で無垢な子供の実直さが流れを変えていくのは素直に熱い。

「完全な黒も白もないなら、その狭間でできることをしよう。乗客にレールの汚れは関係ない」というのは現実的な落としどころであり、切実な祈りでもある。

 

今週も挙げる作品が多かったので、思いつくがまま書いたとはいえ時間がかかった。

もう少し書く作品数減らすか各スピードを上げていくかしないと続かなさそう。

次週もやっていく。